ヨーロッパの旅⑤/フィレンツェ/イタリア
この街はいつだって光が降り注いでいる。
ここに来てから、ぼくは一日たりと空を見上げなかった日はない。
青空はどこまでも高く
しかも水で薄めた絵の具で描いたように涼しく透き通っている。
霞のような雲はまるで塗り残した画用紙の白い部分みたいに
その空の中を控えめに漂い、風や光と戯れるのを喜んでいる。
こうしてドゥオモの袂に立ち、大聖堂の壁面沿いに光の源を見上げて
中世の人々の意識の背伸びを想像するのが日課となってしまった。
ドゥオモはフィレンツェの街の真ん中に聳えており
大抵どこからでも見ることができる。
天才建築家ブルネッレスキによって掛けられた半球状の円蓋クーポラは
スカートを膨らませた中世の貴婦人を見るようで微笑ましい。
チェントロ(街の中心地)の方角を確認するにはいい目印になる。
花の聖母教会とも呼ばれるこの大聖堂の
白と緑とピンク色の大理石で装飾された外観は
威厳と優雅さに溢れ、見上げる者を圧倒する。
仕事が終わって先生のアトリエを出た時に
ポンテ・ヴェッキオの先に
夕焼け色に染まるドゥオモのクーポラを見つけると
なぜだろう、安心するんだ。
そんな心地よい夕刻はついドゥオモまで
大股で歩きたくなってしまう。
また同時に、こうしてドゥオモを見上げながら
少し後ろめたくなる理由も分かっている。
それはぼくがこの街に来てまだ一度もドゥオモに登ったことがないわけと同じ。
ささやかな賭け事のような
きっと、もうぼくしか覚えていない約束に由来している。
「冷静と情熱の間」が好きで、特にこの冒頭は何度も何度も読み返した。
今思えば、キザな文章(笑)
でも、そんな言葉も似合ってしまう。
フィレンツェのドゥオモを見下げると
美しい花の都が現れる。
ポンテ・ヴェッキオを走って渡る「順正」も想像してしまう。
でも、実際はこんな感じだったり。。。
でもでも、心地いい、夢の街フィレンツェ!!